講師:両備ホールディングス株式会社 両備グループサスティナビリティ本部 グループ未来事業推進室室長 グリーンビジネス推進チームチームリーダ 小山 正倫 様
6月18日、「地方創生と脱炭素社会への貢献」をテーマに第12回オンラインセミナーを開催しました。
脱炭素への取り組み
小山様は、環境省認定の脱炭素アドバイザーベーシック資格を取得しており、両備グループの脱炭素への取り組みを主導しています。同社は、2050年までのカーボンニュートラル達成にむけて、具体的な取り組みとして温室効果ガス排出の削減を進めています。
講演では、ESG投資(環境、社会、ガバナンス)の重要性についても強調されました。国連の責任投資原則(PRI)に署名する企業が増加しており、金融機関が投資先を選ぶ際に環境要素が重要視されるようになっています。脱炭素対応企業には低金利での融資が進む傾向にあり、地方銀行でも脱炭素関連商品が増加しています。
脱炭素経営のリスクと機会
小山様は、脱炭素経営が企業のリスクマネジメントと競争力強化に直結することを強調しました。金融機関からの融資条件が脱炭素対応によって有利になる一方で、対応しない企業は高い金利での融資を強いられる可能性があります。また、大手企業からのサプライチェーン要求や自治体の入札条件に脱炭素対応が含まれるケースも増えており、企業にとっては重要な課題となっています。
両備グループは、具体的な脱炭素取り組みとして、社内の排出量を一元管理し、スコープ3まで対応しています。2030年度までに2013年度比でスコープ1、2の排出量を38%削減する目標を掲げており、特に運輸交通部門での排出量削減が重要とされています。同部門は全体の80%の排出量を占めており、バスや物流の運営が中心です。
両備グループの具体的な取り組み
両備グループの取り組みの一環として、公共交通の利用促進が挙げられました。マイカーリプレースによる排出量削減、路線維持による経済効果や渋滞緩和が期待されています。また、クラシックカーのEVコンバージョン事業も進めており、ロンドンタクシーのEV改造プロジェクトなどが紹介されました。さらに、自社製造の小型EV車両や生ごみ処理機も環境配慮型の製品として製造・販売されています。
スタートアップ企業との協力も積極的に進めており、イノベーションファンドを通じて新技術の実証を行っています。脱炭素関連技術への投資も重要な活動の一つです。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーの活用についても具体的な取り組みが紹介されました。太陽光発電の最大活用を図るため、グループ内での電力融通が行われており、太陽光発電設置が難しい施設への電力供給も進められています。また、岡山の自治体と協力して小水力発電の開発を推進し、地域へのエネルギー還元も目指しています。
脱炭素支援サービス
両備ホールディングスは、企業向けに脱炭素支援サービスを提供しています。排出量算定と削減支援を行い、スコープ1、2、3に対応する算定ノウハウを提供しています。さらに、脱炭素サポートプランとして、1年間の排出量算定と見える化をサポートし、企業が自社の排出量を正確に把握できるよう支援しています。
また小山様は、PVリボーン協会の藤井尊久代表理事とディスカッションも行いました。
2024年問題と脱炭素対応
藤井代表から、物流業界が直面している「2024年問題」(働き方改革による労働時間の制限)について質問がありました。小山様は、2024年問題が目前の課題であり、物流部門と連携して緊急対応が必要であると述べました。同時に、中長期的な脱炭素目標を設定し、持続可能な解決策を模索しています。荷主企業からの環境要求が増えており、脱炭素対応がビジネスチャンスにもなっていることが強調されました。
ESG投資と物流部門
次に、藤井代表はESG投資が物流部門にどのように影響しているかについて質問しました。小山様は、ESG投資が注目される中で、脱炭素対応が企業価値を高める要因となり、競争優位性を確保することができると説明しました。物流部門では、排出量の正確な算定と報告を行うことで、ESG投資基準に適合するためのデータ管理が重要であると述べました。
排出量データの管理方法
藤井代表から、物流部門の排出量データ管理の方法について質問がありました。小山様は、物流部門では燃費データを基に排出量を算定し、一元管理システムで管理していると説明しました。取引先のデータ収集には労力がかかりますので、環境省の二次データベースも活用して効率化を図っていると述べました
クラシックカーのEVコンバージョン
藤井代表は、クラシックカーのEVコンバージョン事業についての詳細と今後の展開についても質問しました。小山様は、クラシックカーのEV改造は、環境に優しい新しい価値を提供する取り組みであり、既に実績もあり、本社でも展示しています。今後のニーズに応じて事業を拡大する計画があると述べました。
太陽光発電とソーラーシェアリング
藤井代表は、太陽光発電の需要と供給のマッチング、およびソーラーシェアリングの課題についても質問しました。小山様は、「発電が得意だが需要が少ない事業」と「発電は難しいが需要が多い事業」とのマッチングが重要と考えると述べました。