講師:RGC株式会社(琉球ガラス村)常務取締役 川上 英宏 様

6月27日、「沖縄のガラスの未来~時代の変遷と共に歩み続けた琉球ガラス」をテーマに第6回オンラインセミナーを開催しました。

藤井尊久代表が「日の丸ソーラーリボーンの実現に向けて」と題して協会の概要や実現計画について説明。続いてRGC株式会社 常務取締役 川上 英宏 様に「沖縄のガラスの未来~時代の変遷と共に歩み続けた琉球ガラス」についてご講演いただきました。

※川上様には、本年4月、一般財団法人PVリボーン協会のガラス部会が沖縄を訪問した際にも、丁寧にご案内いただいています。

川上様は、「工芸が盛んな沖縄だが、約110年の技術の継承がある琉球ガラスは、県の伝統工芸に指定されているものの、経済産業省の伝統的工芸品には認定されていない」また、「ガラスを構成する分子は規則正しい状態に収まっていないため、分子レベルでは液体に近く、最近の研究では両方の性質を兼ねそろえたいずれとも言えない未知の物質とされる」などと説明された上で、ガラスの種類、琉球ガラスの技法と歴史、リサイクルとアップサイクルについて詳しく説明されました。

ガラスの種類

窓ガラスに使われているソーダガラス、鉛を含むクリスタルガラス、ほうけい酸ガラス(耐熱ガラス)、光ファイバーなどに使われている純度の高い石英ガラスがあります。伸び縮みする性質は膨張係数で表わし、それぞれのガラスで異なる膨張係数をそろえて使用します。ソーダガラスの主原料は珪砂(けいしゃ)70%、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)約15%、石灰(炭酸カルシウム)が約10%。

琉球ガラスの技法と歴史

琉球ガラスは、さお先に溶けたガラスを巻き取り、息を吹き込んで作る「宙吹き(ちゅうぶき)技法」で作られており、この技法は2000年前のイタリアに遡るそうです。手作りのため温かみがあり、小ロットでの生産が可能、比較的分厚く日常遣いに向いています。川上様は、琉球ガラスの歴史についてもお話しくださり、14世紀頃の琉球王国にガラスが伝来したこと、製造のはじめは1909年の沖縄硝子製造所であり、戦後は沖縄ガラス工場が再開、コーラ瓶やビール瓶を再利用した製造がおこなわれたことをお話し下さいました。需要についても、県民から駐留米軍、本土復帰後は観光客へと推移して、現在30以上の工房があるなかで、アートへ向かう潮流、車のガラスを利用したMadoのシリーズのような、原点回帰で再生ガラスへと向かう潮流、そのほか多種多様な展開が見られるそうです。

リサイクルとアップサイクル

戦後の廃瓶を使ったガラス作り、また、将来的には家電や自動車、太陽光パネルのガラスを再利用するなど、廃棄されるガラスをリサイクル、アップサイクルして商品に生まれ変わらせるという一連の流れに、沖縄として、歴史的な技術を継承していく必要性を感じていると述べられました。そのための組成分析や、市場としての出口開発、色の開発、異素材との融合による工芸品やオブジェの制作など、産学官連携、企業同士の連携、地域、オールジャパンという形で取り組んでいく必要を感じているそうです。ガラス素材が循環する社会を目指して、ガラス容器以外に、ケイ素を使った土壌改良、薬液注入材といった用途での研究も始めておられるそうです。
講演終了後には、川上様と藤井代表が講演内容をもとに話を継続。


講演終了後には、川上様と藤井代表が講演内容をもとに話を継続。

川上様からは、ガラスを再造形するだけでなく、ケイ素として利用する可能性について研究が必要との見解がふたたび示されました。

また車のフロントガラスに使われている樹脂成分が、溶解の際に有毒ガスを発生させる恐れがあるとも述べられ、ケイ素としての利用の場合と合わせて、異物の除去、前処理の必要性について触れられました。
また、参加者からは、「ガラスのリサイクルにあたり、容器で使う場合に考えられる健康被害にどのような認識を持たれているか」という質問がありました。

川上様は、「食品衛生法の基準値を満たしている必要がある。容器として使用する場合は、セレン、カドミウム、鉛が中の液体に溶けだしていないか溶出試験を行っており、容器以外に建材やオブジェといった再利用も可能」と回答されました。