講師:一般財団法人 PVリボーン協会 代表理事 藤井 尊久

12月20日、「特許から見たソーラーパネルリサイクル装置の比較」をテーマに第9回オンラインセミナーを開催しました。

2022年5月に、環境省が使用済パネルのリサイクルを今後義務化する可能性があると発表したことを受けて、補助金などを活用し、ソーラーパネルのリサイクル事業を新設する企業が増えてきています。

ソーラーパネルリサイクルの補助金利用状況

経産省の「ものづくり補助金」で8件、同「事業再構築補助金」で42件、環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」で11件が採択されています。

リサイクル装置の導入状況

現在、適正処理が可能な産業廃棄物中間処理事業者は全国に42あります。
2022年時点で28台が導入されていたリサイクル装置ですが、そのうち一番多かったのが株式会社環境保全サービス様の「ガラスわけーる3型」で7台でした。
それから一年後の2023年現在、導入事業者53社中、株式会社チヨダマシナリー様の「PVリサイクルハンマー」が18社、株式会社環境保全サービス様の「ガラスわけーる」が11社、未来創造株式会社様の「ブラスト工法」が10社に導入されているという状況です。

国内のソーラーリサイクルの研究開発

リサイクル装置については、株式会社環境保全サービス様が2013年から自社で取り組んで2016年から事業化されています。
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業として、株式会社新菱様も2013年から研究開発を始めておられます。
また、環境省予算による研究開発も進められています。

環境省(MOE)研究開発事業

東芝環境ソリューション株式会社様はソーラーパネルの状態を確認し、ガラスが割れているかどうかでPVクラッシャー(R)もしくはPVスクラッチャー(R)を使用するという考え方で進めておられます。
リサイクルテック・ジャパン株式会社様はガラスをめくる破砕方式、ハリタ金属株式会社様はシュレッダーで破砕して分別する方法を採用しておられます。

NEDO研究開発事業

三菱マテリアル株式会社様では、NEDO2(2014年)とNEDO3(2015~2018年)で改良を加えておられ、当初の二つのローラーに入れてバックシートからガラスを取り外す方法から、パネルを温めて折り曲げ、剥離ローラーを通してガラスを剥離させる方法に変更して特許を申請しています。これには後工程があり、色彩選別機を導入しガラスのみを取り出しています。

東邦化成株式会社様でもできるだけガラスを残したいという考え方で、バックシートを研削機で除去した後、封止層と太陽電池セルを研削、ガラスに付着するEVAは膨張させて回転ブラシで除去するという方法で特許が権利化されています。
株式会社トクヤマ様では、太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発に取り組まれ、4件の特許を出願してうち2件が認められています。

各リサイクル装置の特徴

導入済の主要リサイクル装置は、装置メーカーが開発したものと、処理業者・パネルメーカーが開発したものに大別できます。

前者(装置メーカーによるリサイクル装置)では、パネルを温めてガラスをハンマーで落とす株式会社チヨダマシナリー様の「PVリサイクルハンマー」、ローラーでガラスを割って落とす株式会社環境保全サービス様の「ガラスわけーる」、パネルをローラーに通すことでガラスを剥離させる近畿工業株式会社様の「ReSola(R)」、また、未来創造株式会社様とミクロンメタル株式会社様の「ブラスト工法」は吹き付けによってガラスを粉砕分離するもので、以上はガラスを剥離するという思想に基づきます。これに対して、株式会社エヌ・ピー・シー様の「ホットナイフ分離法(R)」は、ガラスを割らずにその他のものを分離します。

後者(処理業者・パネルメーカーによるリサイクル装置)は、カバーガラスのみを割らずに取り出すソーラーフロンティア株式会社様の「パネルセパレーター」、バックシート側から削ってガラスを残す東芝環境ソリューション株式会社様の「PVスクラッチャー(R)」、株式会社新菱様の加熱燃焼処理があります。
このうち、株式会社新菱様の加熱燃焼処理は、株式会社新見ソーラーカンパニー様と思想的には近いものになっており、マテリアルを分解抽出でき、高度な処理が可能です。
セミナー終了後、大同興行株式会社様の河村俊幸さんより質問があり、ソーラーパネルの60%がガラスということもあり、分離後のガラスの用途についての質問がありました。これに対して、カレット状に排出してもう一度ガラスにするのが良いと考えている、と回答しました。

また株式会社西建設様から、株式会社新菱様と株式会社新見ソーラーカンパニー様の装置の違いについて質問がありました。代表の藤井から、特許を見ている限りでは、炉内を窒素にするか過熱蒸気で無酸素状態にするかの違いがあるとともに、株式会社新菱様は処理業者であり、株式会社新見ソーラーカンパニー様は装置メーカーである(購入の対象となる)点が異なると回答しました。