– プロフィール –

1975年

沖縄県に生まれる

1996年

川崎医療短期大学放射線技術科を卒業、放射線技師として岡山県新見市内の病院に就職

2009年

株式会社新見ソーラーカンパニーを設立し、自社製太陽光パネルの製造

2017年

パネル廃棄問題に取り組む

2018年

各実験を行い熱分解装置プロトタイプの設計を開始

2019年

ものづくり補助金に採択され、熱分解装置プロトタイプを完成させる 

2021年

中国実用新案登録、日本特許新案登録

佐久本様は放射線技師として岡山県新見市に就職されたとうかがっています。ソーラーパネルに関心を持たれるまでの経緯を教えてください。

幼少期に、捨てられていたテレビやファミコンを分解して洗浄し、再度使えるようにするという経験をしています。高校時代には太陽光電池の特集をテレビで見て、未来のエネルギーとしての認識を持ちました。

放射線科に進学して、物理学の授業で太陽光の原理を学ぶと、それは自然界の中で起きるシンプルな仕組みであることが分かりました。

実際にどの位の電気が作れるのかといった関心から、放射線技師として勤めながら自宅でソーラーパネルの実験を始めました。自分で太陽光発電の仕組みを作り、発電した電気をインバーターで変換して、扇風機が動いた時には感動しました。それをきっかけに自宅に本格的に設置しようと考えました。

いつ頃の事でしょうか。 

2007年、2008年頃のことです。当時、既に中国にはソーラーパネルを作る工場が400社程ありました。

国産のパネルと性能上は大きな差はないと思ったので、それぞれに連絡をして資料を取り寄せ、1ワットあたりのコストパフォーマンスが良い40社に絞った上で、やり取りを重ねて4社まで絞り込みました。

ソーラーパネルが生み出した電気を使用するには、直流から交流に変換する必要があります。そのためのパワーコンディショナーは、オムロン株式会社が製造していました。他社からも販売されていましたがいずれもOEMで、三菱電機の三菱太陽光発電システムのみが全て自社製でした。オムロンにパワコンを売って欲しいと繰り返し頼みましたが、まだ起業もしていない一個人は、なかなか相手にはしてもらえませんでした。

中国でのパネル製造はスムーズに行きましたか。

実データを取るため、4社のパネルを購入しました。うち2社は日本ではまだ知られていない会社でした。通訳を雇い、実際に中国へ渡って関係者に会いました。白酒を記憶を無くすほど呑んで、それが良かったのかどうか、信頼関係を築いて契約が決まりました。その契約を持って再度オムロンにお願いをすると、これは知らなかったのですが、オムロンも同社との契約を模索している段階だったらしく、特例的にパワコンを売ってくれる流れになりました。

当時、オムロンの担当者が新見までやって来て、我が家の裏庭での実験を見て行かれました。その頃、岡山県内でオムロンと直接取引が決まったのは2件目でしたが、この時点ではまだ起業には至っていません。2009年に新見ソーラーカンパニーを起業して、1年程は放射線技師と兼務していました。

自社製ソーラーパネルの売れ行きはいかがでしたか。

中国のソーラーパネルのメーカーに契約金を支払ったものの、初期の主力商品はソーラーパネルではなく、南アフリカで開催されたW杯で話題となった楽器「ブブゼラ」等で、2、3年ほどはネットショップで色々な商品を販売して売り上げを作りました。 

ソーラーパネルは、息子と同級生の孫を持つ当時の新見市長が最初の顧客になってくれました。 太陽光エネルギーを市政に取り上げるため、先ずは自分で試したいとのことでした。2010年か2011年頃のことです。そのパネルを見学した多くの方々と契約に至りました。

新見ソーラーカンパニーが設置したソーラーパネル

ソーラーパネルの製造、設置から、リサイクルへと関心を広げたのは何がきっかけだったのでしょうか。

2015年頃から、好ましくない設置業社の話を耳にするようになりました。ソーラーパネルのリサイクル状況を調べましたが判然とせず、先々、産業廃棄物になってしまうのなら、自社販売分の処分くらいは責任を持ちたいと考えました。

処理装置の開発に着手されるわけですが。

有機物と無機物を分離する方法として、有機物を溶かして無機物を抽出する方法を試しましたが、うまくいきませんでした。そこで、石窯オーブン等にアイディアを得て、有機物を気化させる方法を思い付きました。加熱水蒸気で酸素を押し出し、無酸素状態にして熱分解する方法です。そして、2019年に、ものづくり補助金を得て、熱分解装置のプロトタイプ(佐久本式ソーラーパネル熱分解装置)が完成しました。この装置は、燃焼にともなう二酸化炭素を排出せず、高純度のマテリアルを抽出する世界初の技術です。

熱分解装置のプロトタイプ

現在、高速大量処理が可能になる連続式実用機(Atmos)の製造を進めており、長らくお待たせしましたが、今年の秋には、お披露目させていただきます。

現在、製造を進めているAtmosのパース図

御社は資源循環型買取保証付ソーラーパネルの販売も始めておられます。

資源循環型買取保証付ソーラーパネルは、耐用年数を迎えたり、破損するなど不要になった際に、弊社が買い取って再資源化する保証をつけたソーラーパネルです。引き取ったパネルは熱分解装置で処理し、資源として有効活用します。

新たに販売するパネルに買取保証をつけることで、将来の廃棄処分の心配がなくなり、発電事業者も導入しやすくなると考えています。

今年4月に先行して新見市の石灰総合メーカーに導入しました。現在、資源循環型買取保証付ソーラーパネルへの引き合いが多くきています。今年は約9000万円の売り上げを見込んでいます。

協会の設立にも大きく関わっておられます。

私はPVリボーン協会の設立者ですが、役員ではなく皆さんと同じ一会員です。

なぜならば、私たちが目指すソーラーパネルの再生(PVリボーン)を実現するためには、Atmosだけではなく、他のリサイクル装置導入企業様の協力も必要だと考えているからです。

協会の取り組みで、ソーラーパネルのリサイクルにおける最大の課題だったガラスの処理に目処が立ちました。現在、協会では「REBORN GLASS(リボーン・グラス)」の商標を取り、ブランディングに取り組んでいます。

倉敷市のガラス工房「ぐらすたTOMO」水口智貴様が廃棄ソーラーパネルから佐久本式ソーラーパネル熱分解装置で抽出したガラスを使用してグラスを製作
上記工程を経て、水口様が製作したグラス

今後の展望をお聞かせください。

無資源国・日本を巡っては経済安全保障の観点からも資源のリサイクル技術は欠かせません。PVリボーンが確立できれば日本は変わるのではないでしょうか。

産官学民オールジャパンで、エネルギーの自給自足を実現したいです。


新見ソーラーカンパニー様のHP

https://niimi-solar.com/