講師:office SOTO 代表 山下 幸恵 様

10月19日、「電力ビジネスの基礎知識とPPAの仕組み」をテーマに第8回オンラインセミナーを開催しました。

藤井尊久代表から出席の御礼と、今後、エネルギーというものを考えていくなかで、太陽光パネルの大量廃棄問題だけでなく電力ビジネスについても学ぶ必要があるのでは、とセミナー開催の趣旨が語られました。
続いて、office SOTO代表 山下 幸恵 様にお話しいただきました。

山下様は、大手電力グループを経て、新電力デマンドレスポンスやエネルギーソリューションに従事してこられました。
今回のセミナーでは、電力ビジネスの基礎的な用語から、現在拡大中のPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)の現状まで、詳細に説明して下さいました。
以下はその要約になります。

小売電気事業の仕組み

「発電事業者」が電気を作り、全国に10社ある「一般送配電事業者」が電気を送り、「小売電気事業者」が電気を売ります。
発電事業者、小売電気事業者はライセンス制です。

小売電気事業者の4大業務

小売電気事業者の業務は、電源の調達、需給管理業務、需要家への請求業務・各種説明義務、省エネ・デマンドレスポンスの促進の4つになります。
電源の調達は、天気や曜日、時間帯に関わらず、どんな時でも対応できる電源を、単一の電源に偏らずコストに配慮しつつ集める必要があります。
需給管理業務は、電力需要の「計画値」と「実績値」を30分単位で一致させ、フォーマットに沿って週間、月間、年間計画として提出します。

電気料金の構造

お客様から頂く電気料金(基本料金+従量料金+燃料調達費)が売り上げとなります。
再エネ賦課金はそのまま国に納付するため、利益の源泉とはなりません。
原価は、電源コスト+需給管理費+事務経費と託送料金です。
託送料金は基本料金と従量料金の二部構成になっており、従量料金については送電ロス(損失率)が考慮されます。

小売電気事業者登録の流れ

手続きとしては、需要予測計画の提出先である電力広域的運営推進機関(OCCTO)への登録、その後、経済産業省に事前相談をして申請書類を提出します。
審査期間は1ヶ月と公表されていますが長引く傾向にあります。
登録後は一般送配電事業者との契約が必要であり、必要に応じて、日本卸電力取引所へ入会する場合もあります。
(※日本卸電力取引所への入会は必須ではありません)

PPA(電力購入契約)について

企業が行うPPA(コーポレートPPA)は、日本では数年前に始まりました。
指定した再生可能エネルギー発電設備の電力を、長期にわたって購入できる契約です。契約期間は5年~20年です。
設置場所と設備保有者、契約方法で分類すると、設置場所が需要地の中(オンサイト)で第三社が設備を保有する場合は、従来のリースと、発電された電気を購入するPPAになります。
需要地の外(オフサイト)の発電所を第三社が所有する場合は、今現在一般的なPPA(フィジカルPPA)と、環境価値だけ調達するバーチャルPPAとに分かれます。
バーチャルPPAは日本ではあまり普及していません。

オンサイトPPAとオフサイトPPA

オンサイトPPAは、工場の屋根や駐車場など、需要地内に発電設備を設置して自家消費するものを指します。
そのため、送配電ネットワークは介在しません。小売電気事業のライセンスは必要なく、需要家は環境価値も調達できます。
オフサイトPPA(フィジカル)は、需要地外の発電所から電気を調達する契約で、送配電ネットワークを介在し、小売電気事業者が必要になります。
一般的な電気の調達と同様ですが、オフサイトPPA契約とは別に、雨天や夜間の供給に備えて電力会社との契約も必要です。

オフサイトPPAにおける自己託送について

自社または自社グループが所有する敷地外にある発電所から、自社の需要地へと電気を送る場合、需要家が小売り電気事業者の義務を負うため、需給管理の提出が必要となります。
太陽光発電では、低圧需要地での自己託送は実質的には不可となります。
自己託送は自社の発電所を原則としていましたが、一昨年緩和されました。新設の再エネ電源に限り、組合を設立すれば組合内メンバー間の自己託送が可能です。
オフサイトPPAは今後需要が高まると考えられています。

発電事業者がオフサイトPPAに参入するには

オフサイトPPAに対応できる小売電気事業者を見つけること、発電コストを低減すること、発電所の技術的な要因による運転リスクを低減することがポイントになります。
下記の自然エネルギー財団と環境省の関連リンクを参照して下さい。
自然エネルギー財団 コーポレートPPA実践ガイドブック
環境省 オフサイトコーポレートPPAについて