講師:みやまパワーHD株式会社 取締役CEO 磯部 達 様
2月9日、「脱炭素先行地域づくりの事例紹介について」をテーマに第10回オンラインセミナーを開催しました。
みやまパワーHD株式会社について
パナソニックの事業企画のメンバー6名がスピンアウトして設立されました。
ドイツのシュタットベルケ(都市公社)に倣い、自治体が出資してエネルギー会社を設立して、電力を売買した収益を地域の課題解決に使うという事業を進めておられます。
現在、脱炭素先行地域は全国で74か所採択されていますが、そのうちの5か所の採択実績があります。
なお、同事業において複数の採択実績を持つのは、みやまパワーHD株式会社がトップクラスとのことです。
みやまパワーHD株式会社の共同提案採択および支援自治体
長野県上田市、島根県邑南町、岡山県瀬戸内市、宮崎県延岡市、沖縄県与那原町、これに加えて、エネルギー会社の支援という部分で京都市のテラエナジー株式会社との連携にも関わっておられます。
パナソニックと業務提携して共同推進しているとのことです。
脱炭素先行地域の概要
脱炭素ロードマップに基づき、2025年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を選定し、地域特性などに応じた先行的な取り組み実績の道筋をつけることが目指されています。
交付金は上限50億円、事業費総額は70数億円になります。
事例(1)上田市の概要
上田電鉄別所線というローカル鉄道と市民がともに支え合う「ゼロカーボン×交通まちづくり」、上田駅から別所温泉駅への沿線の自治会を対象にしています。
鉄道用送電設備を活用した自営線マイクログリッド、地元大学に設置した大型蓄電池を活用したエネルギーマネジメント、別所線の利用促進と移動の利便性向上などが計画されています。
市外へ流出するエネルギー代金を還流させる仕組みを作って、事業収益の一部は地域課題解決事業に充当します。
事例(2)与那原町の概要
沖縄本島で一番コンパクトな自治体で、那覇市のベットタウンであることから人口は減少しておらず、平均年齢も若いという特徴がある地域です。
一人当たりの所得が低く、エネルギー代金などの流出が著しいことから、脱酸素の取り組みを通じて「温室効果ガスの削減」「稼ぐ力の創出」「地域のお金の流出を防ぐ」を目指します。
歩けるソーラーアーケードを設立して健康に寄与する、ショッピングセンターにソーラーカーポートを設置するといった計画があり、小型風力設備や、交付金対象外ながら波力発電所の建設も予定しています。
事例(3)延岡市
高度成長期に開発が進んだ九州有数の大住宅団地を対象としています。ニュータウンのリニューアルとレジリエンス、ウェルビーイングな町づくりがポイントです。
設備投資と活動費の20数億円の資金調達が必要なため、金融機関との期中モニタリング計画を徹底しているとのことです。
共通ノウハウで多くの市町村での展開が可能に
連携企業として、運営業務の支援のノウハウや業務フローなどを作り、地域住民へは、脱炭素の進み具合の情報を提供する活動を行なっておられるそうです。
脱炭素先行地域の採択にあたっては、地域の魅力と質の向上に資するテーマであること、各地に展開できるモデル性が必要で、国の支援が終了した後も、他の地方自治体が導入できるような提案であることが大切だそうです。
各企業が持つノウハウを組み合わせて、みんなで実行してくという形が重要ではと括られました。
終了後、質疑応答の時間が設けられ、交付金は交付決定したらすぐに入ってくるのかとの質問に対し、概算請求し、年度で精算する仕組みもあると回答されました。
株式会社エネマネの難波様からは、地熱発電をもっと利用した方が良いのではとの発言があり、難波様から、自治体によっては地熱発電を利用したいところはあるものの、事例が少ないとの回答がありました。
またパネルの選定の仕方については、先行地域においては、全ての機器、機器をつないでマネジメントすることを優先しているとのお話でした。