講師:国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 社会とLCA研究グループ 主任研究員 櫻井啓一郎様

国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門社会とLCA研究グループ主任研究員の櫻井啓一郎様に「太陽光発電を上手に使う:動向、課題、未来」と題してご講演いただきました。
櫻井様は京都大学で博士号取得後、産総研(旧電総研)に就職され、以来20数年太陽電池に関わって来られました。
現在は地方自治体の脱炭素化の支援等を手がけておられます。

講演の概略は以下の通りです。

太陽光発電の最近の動向

現在のような太陽電池ができて半世紀たち、価格は1000分の1に下がって発電コストとしては安価になりました。
火力発電所の運転を止めて、新たに太陽光発電所や風力発電所を建てる方が安いという地域が世界の半分以上になっています。
新設の電源については8割以上が再生可能エネルギー(主力は太陽光と風力)という現状で、特にこの10年間で急激に状況が変化しています。

太陽光発電の普及が進むと、2030年までに世界の電力の3割以上が太陽光と風力で賄えるようになり、化石燃料の発電量を超えることも可能です。
世界全体の全エネルギーを再エネだけで賄うとしたら、現在よりも安価になります。
日本でも電力の9割を2035年までにゼロエミッション化できるという試算(ローレンス・バークレー国立研究所)があります。

気候変動の状況と国際競争

再エネの導入を急いだほうがよい理由として、経済的な理由と地球温暖化の問題とがあり、温暖化については人為的であることが明らかです。
結果として、猛暑日やゲリラ豪雨が増加しており、今後は水資源・生態系への影響、食糧生産の減少、砂漠拡大、洪水・渇水被害の増大、難民増加、戦争誘発等の影響が予想されます。

今世紀中の海面上昇はメートル単位になる可能性もあり、お金をかけてでも温暖化ガス排出を抑えた方が経済的であると言えます。
平均気温2.5度の上昇で、世界経済の損失はGDPの0.2~2%だと試算(AR5)されています。

こうした現状に対し、今後の10年間での対策が重要です。
気候変動のリスクが非常に高く切羽詰まっている状況だ、という大義名分が、現在、国内関連産業への大規模な支援へとつながっています。
特に中国が力を入れて投資していて、あたかも温暖化を背景にした力任せの経済戦争をしているようです。

排出削減には、電力を単純にゼロエミ化するだけではなく、電力を低排出にしつつ今まで化石燃料を使っていた分野を電化する(電化とゼロエミ電力の増強とを並行して進める)必要があります。

太陽電池の原理と環境性能

ゼロエミ電力は十分にあり、世界の電力消費量に対して、水力発電と地熱発電だけでもそれを超えることができます。
風力発電ではその何倍、太陽光発電では何十倍に相当すると見積もられています。

そもそも、地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、現在人類が消費しているエネルギーの一万倍近くに相当します。
世界の電力を太陽電池で賄うのに必要な面積は、サハラ砂漠のごく一部でよく、しかもサハラの砂は酸化シリコンなのでそこから太陽電池が作れます。
太陽光発電の資源量は人類にとって無限です。

太陽電池の原理ですが、光のエネルギーを熱として捨てるのではなく電力として取り出すというもので、その際、半導体を利用します。
普段動かない電子に光が当たると動きだす、電子がぶつかり合って振動することで電気ができるのですが、普段はそれが熱になっている。
熱になる前に半導体を使って電力を取り出します。

設置にあたっては若干の温暖化ガスを排出するものの、ライフサイクル全体としては低排出で電力の供給が可能です。
再生可能エネルギーは、製造等に消費したエネルギーの数倍に相当する電力が回収できるうえ、重金属汚染の可能性も低いため環境に優しいと言えます。
なお、太陽電池は中国で多く作られていますが、中国でも排出削減が進んでおり、地域によっては既に日本より低排出です。

太陽光発電の利用方法の多様化

日本は国土が狭いと言われますが、耕作放棄地なども含めて考えると森林伐採の必要はありません。
制約条件を含めて考えても、再生可能エネルギーで日本の電力需要は賄えます。
一方で、化石エネルギーの輸入に昨年1年間で30兆円を要しており、経済的にも依存を減らす必要があります。

太陽電池モジュールの価格は下がっており、モジュールを輸入したとしても太陽光発電は最も安いエネルギー源のひとつです。
しかもリサイクルが可能で、変換効率等の性能向上が見込めます。
営農型太陽光発電に成功例が見られるほか、牧草地や豪雪地域での太陽光パネルの垂直設置(両面受光型)、水の蒸発を抑制できる水上太陽光、建物のデザインの一部ともなる建材一体型、車載太陽光など利用は広がります。

天候に左右されるという弱点に対しては、気象予報と受容の能動化、地域ごとの天候の違いをならすための送配電網の強化、また近年値段が下がっている蓄電池の活用などの工夫ができます。
電気自動車を電力の需給に活用することもできます。

バッテリーの価格も順調に低減していることから、今後、住宅の設計指針も変わっていく可能性があります。
断熱・耐震・耐久性を確保した上で脱炭素化に対応するには、EVの導入、太陽光発電と蓄電池が必須になってくるのではないでしょうか。

太陽電池モジュールのリサイクル

透明な樹脂(接着剤)の分解が極めて難しいところですが、PVリボーン協会の技術は低コストで燃やさずに取り出せるということで、将来的にニーズがありそうに思います。
個人的な意見ですが世界に通用する技術ではないかと思っています。

再生可能エネルギーの普及はお金もリスクもかかりますが、経済、エネルギー、環境の並立に貢献できます。
その中でも太陽光は安さと普及の速さで最重要な存在になっています。
その太陽光をぜひとも活用していただきたい。リサイクルは可能です。


櫻井様の講演終了後、質疑応答の時間は設けず、藤井代表理事より出席者への御礼と、国内エネルギーの自立化に向けて支援のお願いがありました。